メルマガ12月号『最新コアコアCPI2.5%はインフレ目標の達成を意味するのか』
最新コアコアCPI2.5%はインフレ目標の達成を意味するのか
円安と地政学的リスクに絡んだ輸入物価の上昇は久しく続いており、CPI(消費者物価指数)の動向は目の離せない状況にあります。
最新のコアコアCPIは、2.5%と発表されました。数字上ではインフレ目標2%を超えていますが、果たして目標達成と言えるのでしょうか。
今回はその辺を考察してみたいと思います。
▶最新CPI
総務省発表の最新CPI(2022年10月分)は以下のとおりです。
CPI(総合指数)……3.7%
コアCPI(生鮮食品を除く)……3.6%
コアコアCPI(生鮮食品及びエネルギーを除く)……2.5%
ここで注意したい点は、いずれも前年同月比であることと、価格変動率の高い生鮮食品とエネルギー価格を除いたいわゆる“コアコアCPI”が実態経済を推し計る上でより重用されるのが国際的常識だということです。
すると、より重要なコアコアCPIが2.5%となったのですから、「インフレ目標の達成」と見る向きも多いのかもしれません。しかし、ここは冷静に過去のデータとセットで比較してみましょう。
過去のデータを顧みますと、今年の3月までは長らくマイナスで推移していて、プラスに転じたのが4月からだったと分かります。
プラスに転じて以降の各月のコアコアCPIは以下のとおりです。
4月……0.8%
5月……0.8%
6月……1.0%
7月……1.2%
8月……1.6%
9月……1.8%
つまり、2%を超えたのはインフレ目標設定以来では今回が初めてとなり、「一時的な2%超え」とは言えても、“安定的”な2%の達成とは言えない状況が浮かび上がってきます。
また、2020年を100としてみた2022年10月のコアコアCPIは、“101.7”に過ぎません。この数字は、およそ2年のスパンで見ても、たったの1.7%しか上昇していないことを意味していますから、前年同月比2.5%がいかに特殊で瞬間的な数字であったかをも示しているわけです。
実際、2021年10月のコアコアCPIは、-0.7%と低いものでした。この特殊事情と相まっての前年同月比2.5%上昇と考えれば、額面に現れない実相が見えてきます。
とはいえ、良い兆候には違いありません。いかなる目標の達成にも段階がつきものです。インフレ目標の達成にも段階として、「瞬間的2%到達」→「断続的2%到達」→「安定的2%達成」を経ることになるでしょう。
▶まとめ
以上をまとめますと、
・最新コアコアCPI2.5%は、特殊事情からくる瞬間的数字にすぎない
・出口戦略を前もって考えても、まだまだ実践するときではない
・ただし、インフレ目標達成の良い兆候には違いない
となります。
経済音痴なマスコミや野党の一部では、円安を日本売りの始まりと騒ぎ、利上げを要求する声が上がっています。が、今は利上げ時期でないばかりか、利上げせずとも指標の先取りで円高トレンドに入る可能性も見えてきました。これこそが金融市場の根本なのです。
©nobivan
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